考察

28    情けは人の為ならず


矢板高原マラソンというハーフマラソン大会がある。
実家のある矢板で開催される大会ということもあり、11月の第2日曜に開催されるこの大会に、合計3回参加している。
実家から自転車で20分ほどで、会場の矢板運動公園に着くことができる。
最初の12キロが平坦、12キロから16キロまでがひたすら登り、その後はアップダウンの起伏が重なり、ゴール手前では急な登りとなって、最後は運動公園に戻ってゴール、というスケジュールだ。
私は、2時間が切れるかどうかの平凡な市民ランナー、勝負は、12キロからの登りでどこまで足を使えるか、そして、その後粘れるか。
登りが終わってふらふらになった17キロ付近で、いつも大会役員として交通整理をしている弟に出会う。そして、いつも、「無理すんなよ」と声をかけられる。「無理しないで走れるわけねーだろー」と思いながら、いつも手を振って側を通る。
そして、それからがほんとに苦しくなる時間帯になる。
18キロを過ぎた頃だろうか。ポニーテールが私を追いかけてきていることに気付いた。市民ランアーの習性として、ポニーテールを見ると、そのゼッケン番号を覚えておき、後で名簿と照らし合わせて年齢などを確認しなければならない。そんな習慣に基づく行動をとろうと100m位は併走したが、あっさり抜かれると、みるみるゼッケンは見えなくなった。
「ちくしょう」とは、思わなかった。追いかける力は残っていなかったので、キロ6分程度のペースで走り続けた。
 
20キロ近くになって、曲がりくねった道路が直線になり、前が見えるようになった。そして、100m先に歩いているポニーテールが見えた。
その後ろ姿に気付いたとき、私は、市民ランナーの習性から、年齢を想像してドキドキするだけだった。しかし、後ろから近づくにつれ、ある決意が固まっていった。
歩いているポニーテールを追い越しながら、私は「ファイト」と声をかけた。
そして、肩越しに振り返り、市民ランナーの習性として年齢を確認しようとしたとき、ポニーテールと目が合った。
問題はそこからだった。
私は、息を吹き返したポニーテールに抜き返される不安を覚えた。激励したランナーに抜き返されるなんて、しかも、それが美人のポニーテールなら、私の市民ランナーとしての自尊心は大きく傷つくことは明らかだった。
その後ペースを上げた。多分キロ5分程度になっていたはずだ。
ゴール前の急な上り坂も一気に走り切った。
ゴール前で追いついた70代のランナーには敬意を払って抜かずに併走した。
そして、目標タイムにもぎりぎりで届くことができた。
みんな、ポニーテールを抜きながら声をかけたことが生んだ小さな奇跡ばかりだった。
情けは、人の為ならず。
 
 
 

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