考察

サッカーの概念を用いて、あらゆる社会的事象を分析・認識しようとする試み

19   語り得ぬこと

2005年5月14日に急逝したTDの葬儀が、17日に行われることとなった。この葬儀には、レイと赤羽が出席することになった。
葬儀に出かけるための航空チケットはすぐに取った。10時30分羽田発の飛行機で福岡に向かい、その後で午後2時開に始まる葬儀には十分間に合う余裕のスケジュールだった。
二人が葬儀参加までの過程では、ハプニングが連続した。

(大倉山駅)17日、午前8時25分に大倉山の駅に着いた。

赤羽は、羽田に向かう経路のプランとして、プリンスホテル前から羽田に向かうリムジンバスを選択した。「9時00分」のリムジンバスでも十分間に合うはずだったが、渋滞を想定し、「8時38分」のリムジンにした。その頃レイは、出張の疲れから自宅で就寝し続け、小野達の携帯の呼び出しは鳴り続けていた。
プリンスホテルに向かう路線バスが、大倉山駅になかなか来ない。
タクシー乗り場には雨天のせいか客待ちのタクシーは一台も無い。
赤羽は、リムジンバスをあきらめ、電車に切り替えた。

(武蔵小杉)8時46分頃、大倉山から電車に乗って、50分過ぎに武蔵小杉に着いた。

武蔵小杉で降り、南武線に乗り換えて川崎に向かい、そこで、タクシーか京急に乗り換えるつもりだった。ところが、事故渋滞で、武蔵小杉の南武線は止まっていた。
仕方なく、タクシー乗り場に向かうためダッシューすると、周りには同じ事情のサラリーマンだらけ。
武蔵小杉でのタクシー乗り換えは断念した。

(田園調布)東急線に再度乗って、9時5分頃、田園調布に着いた。

天下の田園調布にタクシー乗り場が無いはずはない、と確信していた。
しかし、天下の田園調布にはタクシー乗り場はなかった。
だから、田園調布から自由が丘に向かった。

(自由が丘)9時13分の電車で自由が丘に向かい、直ぐにタクシーを拾った。

タクシー運転手は、午前10時丁度位に羽田に着くと断言した。
だから、10時30分の航空便にはまだ十分間に合うはずだった。
レイは、小野からのメールに午前8時40分頃気づき、自家用車で羽田に向かい、午前9時20分頃には、タクシー乗車中の庶務2に電話してきた。同行する航空便を確認するためだった。庶務2は、10時30分発のJAL便をレイに伝えた。

(蒲田)環八を走っていたタクシーは、蒲田市内に入ると、9時40分頃からおかしな挙動を見せた。

そして、ある地点で完全に移動を停止した。
10時00分を過ぎても全く動かないタクシーに不審の念を募らせ、レイに電話した。

  • 「このままでは、10時30分発の便にも間に合わない。
  • 11時30分の便を予約しておいて欲しい。」 

この電話を受け取った時、レイは、カウンターでの交渉が効を奏し、予約満席の10時30分発の便に一つだけ空席を見つけたところだった。
この庶務2の遅延によって、10時30分のチケットの発券は無駄になった。

(蒲田)10時10分ころになり、赤羽はタクシーを出た。

約30分間、タクシーは、事故渋滞の中でほぼ静止していた計算だ。
タクシーを降りた場所は分からなかったが、付近の警備員に京急の蒲田駅の場所の方向を確認して急いだ。人混みを探して走り続け、約5分程度で京急蒲田についた。
既に雨は上がっていたが、汗をかいた。
そのまま京急羽田線で羽田駅に向かい、やっとJALのカウンターでレイに会うことができた。

(羽田)出発便の変更をして、そして11時30分発の便を待った。

福岡12時15分着のこの便に乗れば、午後2時丁度には現地に付けるはずだった。
しかし、機材の到着遅れとか何とかで、出発は30分遅れた。これで告別式への30分延着は確定的となった。だから、現地では迅速に行動して遅れを取り戻さなければならない。

(福岡) 12時45分頃到着した。地下鉄に乗り、13時5分頃には、博多駅についた。

式場のある古賀駅は、そこから電車で20数分の距離にあった。電車で向かうか、タクシーで向かうか、既にレイは飛行機の中で作戦を決めていた。地方の電車は待ち時間があるので、タクシーを飛ばした方が良い、と。
その日の赤羽の判断は全て裏目だったので、この選択はレイに任せた。

(古賀市)選んだタクシーは、小型の個人タクシーで、13時10分頃に乗った。

乗車するときに、古賀市までの所要時間を聞くと「40分位かな~」と曖昧な答えだった。おまけに、急ぐ二人の挙動を知りながら、「上(高速道路)にしますか下(一般道路)にしますか」と聞き返してきた。
運転手は、高速道路でも一向に速度を上げず、悠然と運転を続けた。
そして、約30分位して古賀市市内に入ると、急に自信を失ったような運転に変わり、古賀市に不案内であることを乗客に自白した。
運転手は一度タクシーを降りて、別のタクシー運転手にも尋ねたことがあり、同じ場所を2周した。とうとう紳士のレイが何か大声を上げた。
赤羽は、直感を頼りに、運転手に指示を出した。
運転手は、指示のまま2度左折を繰り返すと、案内板が見えてきた。タクシーは、施設の通用門の脇に止まった。


二人が駆けつけた時、丁度出棺を告げる合図の鐘が鳴っていた。
出棺は、レイがタクシー代金の精算を済ませる間一時中断した。そして、二人が位置について合掌を始めると、出棺が始まった。
我々は、予定より50分も遅れた。だけど、この到着こそがTDの意を汲んだ到着だったのかもしれない。
我々は、出棺後の誰もいない式場に入り、写真に向かって二人だけで再度合掌を重ねた。
語り得ぬことを語るとき、目の前で過ぎていった出来事に真実が宿っていることがあるかもしれない。
だから、敢えて感想を加えずにこの長い一日を残しておくことにした。(5/20)

 

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