考察
サッカーの概念を用いて、あらゆる社会的事象を分析・認識しようとする試み
12 古のバッカスDF事情
昔、右SBは荒野だった。遠く離れた左SBも同じく荒野だった。
流れ者の私は、この土地に来て、最初に右SBに住み着いた。右SBは、無番地の所有者のいない土地だったから、初めてこの地方に来た私が住み着くには好都合だった。そして、荒野を耕すのがそれからの日課になった。
遠く見渡せば、左SBには、いつの間にか大川という男が住み着いていた。そして、右SBと左SBの間には、小さな村落があり、四元という男が粗末な小屋を作って暮らしていた。時々、この小屋の方向から、野犬の遠吠えと混じった大声が聞こえてきた。
説教師のTDは、村にやってきては、荒野を耕す大事さを説いた。私と、大川と四元以外には、誰もTDの辻説法には振り向かなかった。
その荒野と村落の北側には、鬱蒼とした森があった。髭を生やした仙人(別名総監督と言ったが)が住むと噂されたが、村の掟では、「森の方向を振り返ってはならない」と戒められていた。そして、その反対には、荒野の右SBから南を眺めると、MFという西の町があった。
さらに、その町のもっと南にFWと言う名前の大都会があることも、大川から聞いて知っていた。村で育った若者の中には、1人前になると都会に観光に出かけ、その楽しさを経験する者もいた。でも中年になって初めて村暮らしを始めた私たちには、FWという都会は別世界のように思えた。
町に出かけると聞くだけでドキドキしたくらいだから。
ある時、村に住むリトルウイング飯島という中年が西の町に出かけたまま帰ってこないことがあった。
農繁期になり人手が足りなくなると、痺れを来した説教師のTDはリトルを連れ戻しに町に出かけた。でもリトルは、「俺らー町が好きだ」と言ったとか言わないとかで、TDの探索から身を隠した。
同じ頃、町を見学に出かけたレッツゴン武田は、何を思ったかFWという大都会が急に見たくなり、そのまま町を突き抜け大都会にまで足を延ばしてしまった。こうなると、TDの手も届かない。説教師TDは、昔町に住んでいたことがあり、町の怖さも十分知り尽くしていた。でも、大都会はもっと怖いので出かけたことは一度もなかった。だから、大都会に潜んだレッツゴンの行方はTDにも探しようがなかった。
TDの古い友人が大都会に住んでいた。TDは、クライフというその友人に手紙を出してレッツゴンの消息を尋ねた。クライフからの返事には、「レッツゴンは嫁を沢山もらっている」とだけ書いてあった。
だから、「町や大都会に出かければ、嫁を沢山もらえる」、という噂が立った。これまで一度も嫁をもらったことがない私も、この噂には心を動かされた。
TDも自慢げに、昔町にいたときに一度だけ嫁をもらった話を私たちに聞かせてくれた。でも、大川も10番もこの話を信じなかった。私は、TDの説教を聞き、一生懸命に嫁の芳香を想像し、時々村境に出かけては町の方を見ることがあった。
私は、数日間、町に出かけ右SBを空けたことがあった。
そして、そんな時は決まって、私の耕す畑が時々都会からやってくる見知らぬ若者達に荒らされた。でも、火の見櫓に昇ったTDと四元が、いつも駆けつけてくれてた。若者達を追い散らすのが彼らの役目でもあった。「森に住む仙人のところに若者達をけして近づけてはならない」、これも大事な村の掟だった。
村は、いつも人気がなかった。人気と書いてひとけと読んで欲しい。
一度、レッツゴンが何年ぶりか村に帰ると、嫁御の写真を沢山見せてくれたことがあった。「大都会は人で混んでいる」と話した後、嫁御をもらった後のガッツポーズも披露してくれた。
私は、いつの間にか、畑を放り投げ嫁御を捜しに右SBから見える南方の町に住み着くことを夢見ていた。
村には、「町に住むには、替わりに荒野を耕す者を見つけなければならない」というもう一つの掟もあった。そして、リトル以外に右SBの荒野を耕してくれる替わりの者はいなかったので、私は、彼に村への帰還を懇願してみた。しかし、西の町を出ていつかは大都会に住む大志を抱いていたリトルは、私の説得には耳を貸さず、西の町に潜み続けた。
こんな我々村人の動揺を察知したか、その頃大都会からやってきた見知らぬ若者が、何度も森の中に入り、仙人に悪ふざけまですることが起きた。そんな時、私たちは、説教師TDに叱られた。
「町や都会の生活は村が支えている」、これがTDの締めくくりの説教となった。そして、TDの尊い教えを書いた紙が火の見櫓に張り出されたこともあった。まじめな私は、これを見て町へ遁走しようとする気持ちを宥めていた。
暫くして、国に人が増え出すと、町や都会で育った男の中から、今度は村の生活を夢見て引っ越してくる者がでてきた。そんな男達は決まって両側のSBの畑に来て、そこで見たこともない野菜を育てた。そして、喜んで町に野菜を売りに出かけ、自由に町と村を行き来するようになった。
自由に振る舞う村人が増えるにしたがい、森の仙人も、都会に出かけて・夜這いすることまで夢見るようになってしまった。
右SBの荒野は、今では立派な農園として輝きを見せている。荒野に慣れた私は、仕方なく昔大川が耕していた左SBの荒野を借りて耕すようになった。
今、左SBから見える東のMFも輝いている。そして、村の住人が急に増えだした理由を考えながら、もしかしたら仙人が守る森の地下には、金が眠っているのかも知れないと想像している。
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