考察

サッカーの概念を用いて、あらゆる社会的事象を分析・認識しようとする試み

８　 DFの値打ちについて（FWの次元研究から）

山口は「３７番ＦＷ」という肩書きをつけて、掲示板に投稿したことがあった。

そしてこう言い訳する。

• ＦＷ」という言葉に直ぐに反応しないで下さい。誰かを刺激しようとしている訳でもなく、そのポジションを狙っている訳でもなく、単に言葉遊び程度です。余り深い意味は、今はありません。

すぐに、この言葉だけでFW武田は反応した。

• 野望を抱く人は、決して自ら「野望を抱いている」と言いません。下心を抱いている人も、自ら「下心ありあり」と言う筈がありません。敢えて、「誰かを刺激しようとしている訳でもなく、そのポジションを狙っている訳でもない」と否定するところに、不穏な響きを感じるのは、私だけなのでしょうか？

なぜFWはそれほど魅力的なポジションなのだろうか。
これを考える材料として、ＦＷの特性を分類してみたい。

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０次元ＦＷ

１点に必ず位置し、そこから足を振り上げるだけがＦＷの仕事だと認識している選手だ。 
類い希な嗅覚に裏付けされたゴール前の点の位置取り、これが信条だ。
誰がこの0次元に住んでいるか、秘密だ

１次元ＦＷ

酒は菊水、パスは縦パス１本と確信し、ゴールに向かうシュート気味の縦パスにのみ反応する。まっすぐ直線的に走り込む事を生き甲斐とするＦＷだ。
もし、パスが曲線を描いて送られてきた場合には、すべて意図的にスルーだ。
只まっすぐ走りきることだけがＦＷの仕事と理解しているため、ドリブルも、只まっすぐ前にボールをけり出し、これと競争する犬のように走り込むのが特徴だ。
ディフェンダーは、こんな１次元ＦＷは嫌いだ。

２次元ＦＷ

足下の空間認識に優れ、スペースを探して絶えず位置を変えるＦＷだ。２次元空間としてのグラウンドにおける人の配置及びその変化に敏感で、絶えず、スペースがないかどうか、こればかり考えて生きている。
もし、相手チームのＤＦが未熟で、いつも一定の場所にスペースが出来ている場合、２次元ＦＷは、その時０次元ＦＷにも変身できる自在性があるのが強みだ。

３次元ＦＷ

仮に足下が混み合い、スペースがなくても、頭上の空間にスペースを見つけることの出来るＦＷだ。却って、足下の混み合う空間の上には（即ち、足下ばかり見つめているＤＦの頭上には）、フリースペースが広がっていることもある 
特に相手ＤＦの背後にこのようなスペースを見つけることが出来たとき、３次元ＦＷは時々ヒーローになることができる。

多次元ＦＷ

ボールの軌道は、３次元空間を移動するのではなく、４次元空間にあると確信している選手だ。
スーパーストリングス理論によって説明されるはずの１１次元の世界観が、そのままサッカーにおいても表現される新しいＦＷ像だ。
言い換えれば、何処にでもいる、異次元の動きを得意とするＦＷのこと。
例えば、この異次元FWが使うフェイントは、異次空間を作り出すための儀式だったのだ。フェイントの儀式に参加してしまったＤＦの周りでは、時間は止まる。この各選手が持っている多次元の位相空間のズレを利用して、時間を止める魔法がフェイントなのだ。 
また、足を吊りだしたＤＦがいたとしよう。そのＤＦの周りの時間も、硬直した足の筋肉が作り出す異質な振動により、時間が止まることがある。その時、４次元ＦＷは直ぐに時空のゆがみに気づき、間の止まったＤＦから容易にボールを奪い、そしてシュートするのだ。

閑話休題・特殊多次元ＦＷ

時々、ＤＦの側に来て、ぶつぶつ、小言や独り言を、独白しているＦＷがいたら、良く聞いてほしい。ぶつぶつの内容を。
ぶつぶつが「念仏」に聞こえるＤＦは、もしかしたらそのFWの霊力により往生の過程にあるかもしれないので、すぐに病院に行こう。そして、その時念仏を唱えていたFWは、紛れもない解脱済み多次元ＦＷだったりするから要注意だ。

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なぜ、３７番はＦＷ宣言したのか、

その答えは、多次元ＦＷの分析にある。
１１月２６日、紅白戦の際に、３７番は、「足を吊りだし、時間の止まったＤＦ某からボールを奪い、得点する」という多次元FWのプレーをして、FWの虜となったのだ。
そして、その足をつったＤＦは俺だった。
確信に近づいたので、ここで言おう。
ＤＦの値打ちとは、生涯に何人幻想を抱いた多次元ＦＷ希望者を生み出したかだ。