考察

サッカーの概念を用いて、あらゆる社会的事象を分析・認識しようとする試み

１　なぜ共働き中年がサッカーをするのか

例えば、週末の皿洗いは夫が分担する家庭があったとしよう。
　原則は土曜の朝から皿洗いが始まるが、金曜の夕食の皿が混じるのは仕方がない。時々、金曜の朝食の皿も混じってくる。これを放置していると、木曜の皿まで混じってしまうことだってある。このような時には、早めに警告を発し、水曜日の食器が混じっていたら、週末の皿洗いは拒否する位の断固たる姿勢が必要になってくる。
　しかし、夫の食器洗いを期待して、食器が放置され続ければ、食器の数が限られシンクも狭い台所の夫は、いつの間にか木曜日頃から皿洗いを始めるであろう。なぜなら、彼は、サッカーをしているからだ。 
　毎週日曜日サッカーをするためには、平日からその準備を始めなければならない。週末の深酒を避け、休日の仕事を避け、そして、日曜に持ち越される家事を最小限にすることだ。放置された食器を木曜日から洗い続ける努力も、その一つだ。 
　家事も仕事も、すべてサッカーをするための準備として受け入れる心理的経験は、新たな価値の序列を確信させてくれる。日々、肉体の衰えと反比例してサッカーを求める気持ちがなぜ高まってゆくのは、この快感に導かれてなのである。