１９　晩の食卓

日時：１１月２７日　午後９時３７分

場所：大木会長自宅　ダイニングテーブル付近
登場人物：大木会長、令夫人、ご子息
この日、バッカスは、ＭＡＩＳ　ＦＣとリベンジ戦をした。
私は、試合結果を聞いて、この日の試合の意味の重大さに驚き、その詳細を参加者に更に尋ねた。
しかし総監督は、激闘の後の疲れのせいで、失点場面すらよく覚えていない。
１０番は、只、勝利を語るのみ。
そこで、ここは想像するしかない。
試合の後で、会長は一度仕事のために会社に出向き、そしてやっと夜遅く自宅に帰宅したところから、このドラマは始まる。

（夫）ただいま

（妻）お帰りなさい、仕事だったの、土曜日なのに
（夫）うん、午前中遊んじゃったからな
（妻）あ、あのＭＡＩＳ　ＦＣとのリベンジ戦は今日だったんだのね
（夫）うん、随分集まったね今日は　１０番の激励に答えて、みんな気合いが入っていたね
（妻）どうだったの、試合の方は
（夫）９対５で勝ったよ。試合展開も、一方的にバッカスのものだったものな。そうだ、お酒ないかい、一緒に飲もう
（妻）まあ、めずらしいこと。勝利の美酒とやらかしら。ねえ、試合の内容もっと聞かせて

ーそこへ、子供がやってくるー

（夫）小遣いやろうか、幾らがいい
（妻）ねえ、試合の内容はどうだった
（夫）いやなに、格別なことはないよ。いつものようにバッカスが勝った、それだけだよ。
（妻）ねえ、あのスリムでかっこいい人は今日はいかがでしたの？。
（夫）ああ、名前まで言わなくても良いよ、大久保君のことだね、彼は地道な仕事をしていけど、ＤＦには向いていないみたいだね。
彼には、左ウイングが一番だ。今日、君がファンだなんて言ったって、嫉妬しないよ
（妻）私は、貴方のファンですわ！　格好いいと言えば、３７番もそうだわ。
（夫）彼はね、主にＭＦをしていたけど、もっと前線でボールにからみたかったんじゃないかな、今日は得点はなかったから。でも、彼がいるだけで、チームに気品のようなものが芽生えるのは不思議だね。
（妻）ねえ、お疲れじゃありませんか、もうお休みなられたらいかがですか
（夫）いや、疲れなんか全く無いよ。そういえば、この前何か欲しいものがあるって言っていなかったかな、明日高島屋に買いに行こうか
（妻）私を誘惑するおつもりね、でも、うれしいわ私。それに、あの、おねだりしてよろしいかしら、私監督のサイン欲しいの、どうでした、監督の動き
（夫）今日は、シュートがふけまくって、１０番なんか「ふけるのは、年だけでいいぜ」なんてヤジとばしていたくらいだ。最後に点を取ったときも、ＰＫだった。三上君とジャンケンでキッカーを決めていたくらい、得点に飢えていたよ。それでもきっちり決めるところは、やはりＦＷの鏡だよ。

ーーーリンリンと電話の呼び出しーーー

（妻）貴方お電話よ
（夫）きっと、彼からだろう
（四元）会長、今日はおめでとうございます、如何でしょうか、是非とも一献差し上げたいのですが
（夫）有り難う、でも今日は妻と大事な話をしているところなんだ。また別の日にしよう。
（妻）四元さんからですか。きっとご活躍だったんでしょうね。それで、どんなお電話だったんですか
（夫）いやなに、今日のフォーメーションの確認だったよ、私の右サイドに、小さなスペースがあったって彼が言い張っていてねーー。それさえ押さえておけば、もっと点が入ったはずなんだけどなーーー
（妻）ねえ、貴方、お酒こぼれているんですけど、どうしたの、思い出し笑いなんかして
（夫）いやなになに、この酒は実に旨い。（子供に向かって）　おい、小遣い要らないのか
（妻）あの藤田さんやレイモンドは如何でした
（夫）君は、スリムな人が好みのようだな。
（妻）バッカスの指導者の皆様もご活躍ですか？
（夫）そうだな、勿論試合の采配はＴＤがとったよ、それに３９番が今日点を入れたな。
（妻）可笑しいわ、貴方ったら。ご自分のことお話ししていないのは、どうしてですの？
（夫）たいしたことなかったよ。いつもと同じさ。今日は少し走ったけど、５０メートルを全力で走ると少し息が切れるようになったね。
（妻）どのポジションにいらしたの、フロントなんて言わないでね。少しは期待しているんだから
（夫）フロントは、２番と９番さ。そういえば、今日は試合に二人とも参加していなかったな、これは内緒だけど、いても、試合の結果には影響なかっただろうな。
（妻）ねえ、フロントなんかどうでもいいですから、貴方のこと聞かせてください
（夫）いやなに、第一セットだったかな、ボール前で混戦になってね。
パスを出したのは大久保君かか三上君。私の方は、その前に体を少し左に向けて相手ＤＦの注意を左に集めておいたんだ。パスがきたとき、右に反転するとフリーになってね。そして、君の顔を思い浮かべながら、軽く右足を振ったらね、インサイドにかかったボールが方向を変えてネットの方に向かっていったんだ。その時、チームメイトの諸君が喜んでいたので、僕も少しだけ嬉しくなったね。
一番嬉しいのは、やはり、チームメイトの諸君の喜ぶ顔だ。
（妻）ぅ〜れしい。お嫁にきてこんな嬉しいことありませんことよ。
もう一本、お澗付けてきますから、もっとお聞かせくださいね。
（夫）ああ、何でも話すよ。それと、お願いがあるんだ。洗濯に使うネットを用意しておいてくれないか。２３番のユニフォームは、ネットに入れて洗わないといけないからね。

ーーーー（でも疲れのために、食卓で居眠りが始まる）ーーー

（妻）まあ、うたた寝をしてまで、笑っている