14 そして総監督は振り返った
戸塚グラウンド 1999年7月10日
TD山之内の試合開始の笛が鳴った。
まず、美しい思い出から
最初の失点経過
時間にして5秒が経った。誰もが想像もしていない出来事に言葉を忘れたとき、10番は、一人怒鳴り散らした。10番の怒りは、油断よりも、ボールに向かって飛び込む闘争心を見せなかった総監督の仕草に向けられていた。
こうして総監督は、一日中俯きながらピッチに立ち、バッカスのリズムが崩れていった。
エスカフェは、これまでの経験から、怒鳴りあうサッカー中年の弱点を知っていた。落ち込んで寡黙になり、怒鳴られて足が止まった中年はただの中年だった。
2失点目
そして、またもやディフェンスラインにロングボールが飛んできた。バッカスディフェンスは、これを見送りそしてクリアーし損なって、ボールは何度も弾んだ。そして、最後にボールは総監督の右脇に飛んでいた。
3失点目
この2失点を挽回しようと、ハーフは高い位置に止まり、ハーフラインを超えて守備に戻るのはディフェンスの4人だけ。監督は怒りにまかせ怒鳴り続けたが、それが一層FWを萎縮させた。
FWの2人は、失敗を恐れ、相手ディフェンダーの陰に隠れて味方からのパスを避け続けた。重苦しいハーフタイムのまま、第二セットの30分が始まった。
総監督は、最初の失点のことばかりを考えていた。
「大豆戸小のゴールなら最初の得点は、絶対に入らなかったーーー」
でも、試合なんか上の空の総監督の前に、今度はミドルシュートがやってきた。ボールはグランドを這いながら、何度もバウンドして、総監督の股間をすり抜けていった。
総監督だけでなく、誰もが
「このボールなら、大豆戸小のゴールでも入る」
と知っていた。
これで3失点
しかし、その後の石川、飯島などの2得点で、挽回し、それまで健闘していたエスプレッソの闘争心は止まった。
反省
誠実な総監督は、3失点いずれにも自己の責任を感じ、これ以上ない落ち込みの中で、試合終了の笛の音を聞いた。そして、持ってきたボールまで紛失し、試合後も、初夏の戸塚グランドに注ぐ日差しを避けるように、俯き続けた。
試合後、総監督が
「最初の失点の時に試合開始の笛の音を聞いておらず、リプレーと思っていた」
という上手な言い訳を言おうとしても、試合後のミーティングで、TDは容赦なくこの言い訳をうち消している。
「キックオフの笛を吹く前に直接総監督に試合開始を確認して、それから笛を吹いた」
「勝てば官軍」「記憶に残るプレーこそ中年の宝物」
総監督を励まそうと書き連ねて、読み返してみると、全然励ましになっていなかった。
- O60
- 13塩見
- 10 四元
- 61倉田
- 14石原
- 09飯島
- 17石川
- 02赤羽
- 15レイ
- 07山口
- 18小野
- 21泉谷
- 08水木
- 55太田
- 11大久保
- 22本多
- 20庭野
-
- O50
- 24西脇
- 49仁科
- 28小田切
- 30田口
- 39青木
- 42千葉
- 06大弓
- 36中田
- 32松田
- 26宮前
- 51浅川
- 33市川
- 29堀田
- 44友利
- 38ミキ
- 45鈴木
- 25森田
-
- 040
- 50遠藤
- 48後藤
- 31栗子
- 34森
- 16三上
- 37苅谷
- 40桝井
- 23若井田
- 35自然
-
- U40
- 19駿介
- 69山階
-
- レジェンド
- 総監督
- 大川
- TD
- 武田
- 大木
- 手島
- 藤田
- 古村