１０　芝との再会

富津リゾート　　１９９８年８月１〜２日

バックスチーム　　菊池　大川　山之内　四元　レイ　赤羽　庭野　古村　河内　カズ
FWチーム　　　　監督　柳　　泉谷　　許　　親父　大政　裕太　仁　　手島
バッカスは２度目の合宿を開催した。
８月１日１０時から１２時までと午後２時から５時過ぎまで練習
８月２日早朝６時３０分から８時まで練習
天候晴れ、気温推定３３度、ぶよ多数
観客２名（泉谷・許のファン）
芝の状態良好
宿舎ピンク色
グランドは、職人手島が見事な直線ラインを引いたので、ワールドカップ仕様となった。
注目の紅白戦では、飯島、石川、武田、大久保らのﾌｫﾜｰﾄﾞ中心選手が欠席のため、
DFチーム　菊池　大川　山之内　四元　レイ　赤羽　庭野　古村　河内　カズ
FWチーム　　監督　柳　　泉谷　　許　　親父　大政　裕太　仁　　手島
の組み合わせで２セット、その他で１セット行った。
尚、この試合には、バッカスの評判を聞きつけて特別に参加したいと希望する広瀬カズ選手が後半から加わっている。チームでは、名前を聞いてすぐに彼を「カズ」と呼び捨てにして、フォワードに迎え入れアイドルになった。
この日の紅白戦には、一つの課題があった。８番手島の仙台単身赴任を控え、下半身の鍛錬がチームメイトの合い言葉だった。その思惑を知らない８番手島は、柳の火を噴くシュートを正面でキャッチして敵味方無く拍手を受け戸惑っていた。そして、２日早朝にも元気に走り回り、確実に腰から下の筋肉は確実に強化された。このコーチ手島の活躍に刺激されたか、久しぶりの登場１６番古村は、午前の練習でのパス渡しの原則を紅白戦でも忠実に実行に移し、模範中年として久しぶりの汗を流した。１６番古村は、手島の活躍を刺激にしていたのだろう。
 
監督は、紅白戦では、柳、大政、裕太を見方につけると、ゴールラッシュを演出した。この監督の活躍を、山之内は、こう呟きながら見ていた。
一緒に友人と車で海水浴に出かけた時に、車のない友人には愛車のＢＭＷを貸してやり、自分は遠慮して中古のカローラを乗って行ったとしよう。ところが浜辺につくと友人にはビキニの女の子がまとわりつき、最後には女の子を同乗させてどこかに消えていってしまった時の心境だ。「俺の車だ、せめて一人でも分けてくれ」　
しかしこの日、山之内には最後までＢＭＷは返されなかった。
親父は、友人大政らのアシストで４得点を挙げた。キーパー菊池の前でボールを見失って一回転し、その後に見つけたボールを押し込むというような個人技を見せた。
 
この試合における菊池の心境を想像してほしい。
信号の無い西表島で、公民館の寄り合いに出るために見晴らしの良い四つ角を５０ｃｃのバイクに乗って飛ばしていたとしよう。そこに突然覆面バトカーがやってきて、１０ｋｍのスピード違反で切符を切られた時の心境だ。
　　「なんでこうなるの」
ところが親父は、落ち込む総監督への配慮も忘れて４得点を挙げた。そして、試合後は、「これで石川に並んだな」と呟いた。
さらに、親父の活躍の陰には、初参加ながら親父のマークに徹し体当たりを繰り返した河内と、武闘派四元の涙があったことも忘れてはならない。河内は、一度親父と体当たりしたときに、親父の腹の肉が振動で脈打つのを感じた。その感触は彼を虜にし、何度も親父との接触を試みたらしい。また暴れる親父を背後から羽交い締めした四元は、ＰＫを取られても自分の立ち技の完成に陶酔した。勿論、四元は、ドリブルする監督に対してきれいな体落としを決めるなど、合宿で技を磨き続けたが、いずれもサッカーとは関係の無い世界の出来事だった。
 
ところで、親父に対して四元が思い切り羽交い締めをしたとき、裕太という若者は大声で「退場だ」と叫んだことがあった。二人は、裕太の母親が親父の配偶者という割と親しい関係にあった。
親父にいたぶられ続けた河内と四元の二人は、試合後「来年こそは親父をつぶす」と重ねて公言し、これを聞いた親父は寝技の研究を表明した。来年の紅白戦迄に、誰かに３人の勘違いを指導しておいて貰いたい。
 
さらに言わせてもらえれば、河内は合宿前日にパンツが足りないと騒ぎだしている。他方で着替えのパンツを持たない親父は、シャワーの後でパンツを履かずに二次会に参加して股を拡げていた。この二人には、普段からパンツを履く習慣も身につけてほしい。
そして気の優しい大川は、一枚しかない親父のパンツを自ら進んで手洗いしていた。
 
長い紅白戦が終わって、親父に得点を許し続けた総監督は、階段に腰をかけた。そして背中を丸めて、長い時間中空を見ていた。悔しいのか嬉しいのか、そして両方なのか。
夏の合宿の報告